肉を柔らかくする方法④ 料理科学の森

肉を柔らかくする方法の一つに煮込があります。
よく、肉はじっくりコトコト煮込むと柔らかくなるイメージがあると思いますが、実は全ての肉に当てはまるわけではありません。今回はその理油を解説します。




上図のように、肉は筋線維と呼ばれる細胞がコラーゲンの膜で束ねられた構造をしています。この筋線維は、長い繊維状の筋原線維タンパク質と水溶性で球状の筋形質タンパク質で構成され、筋原線維タンパク質の間に筋形質タンパク質が詰まった構造をしています。

筋原線維タンパク質が熱で凝固する温度は45~50℃付近。
筋形質タンパク質が熱で凝固する温度は56~62℃付近。
コラーゲンは65℃付近までいったん縮んで最初の長さの約1/3になり、さらに過熱を続けると分解されてゼラチン化します。

つまり、筋肉を構成する三種類のタンパク質は、熱で変性する温度がそれぞれ違います。





①加熱を開始して肉の温度が高くなってくると、最初に筋原線維タンパク質が熱で固まります。この時、筋原線維タンパク質の間を満たしている水溶性の筋形質タンパク質は固まっていないため柔らかく感じる。

②筋原線維タンパク質どうしが熱凝固して固くなる。さらに、コラーゲンが急激に縮むことで一段と固くなる。
③75℃を超えると、コラーゲンが分解、ゼラチン化が急速に進んでいき肉はやわらかくなる。
つまり、いくら煮込んでもコラーゲンの少ない肉は柔らかくならないという事です。

ここからは主観の話になります。
「なぜ、強火ではなく弱火でじっくり煮込むのか?」
この理由を色々調べてみましたが、きっちりした科学的理由が見つかりませんでした。一般的に言われている理由は

①鍋が焦げるから②スープが濁るから(アクがスープに混ざる)③高温の液体に肉を入れると急激に縮み、肉が固くなる(柔らかくならない)からです

参考文献 おいしさをつくる「熱」の科学 NEW調理と理論

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