冷凍焼けとは? 料理科学の森




数週間から数カ月冷凍保存すると、肉の表面が白っぽく変色してしまう現象である。これは水の「昇華」つまり氷点より低い温度で起こる蒸発現象で、肉表面の氷の結晶が直接気化するために起こる。水が気化した後には肉の表面に小さな孔が開き、それが光を散乱して白っぽく見えるのである。肉の表面は実質、冷凍乾燥した薄い肉の層になってしまい脂肪と色素の酸化(冷凍臭)が加速され肉の固さも味も落ちる。

対策としては、①ラップで包み空気との接地面を極力減らす。②急速冷凍を行い素早く凍らすなどがあげられます。

参考文献 マギーキッチンサイエンス

公式ホームページ 料理科学の森

 

肉を柔らかくする方法④ 料理科学の森

肉を柔らかくする方法の一つに煮込があります。
よく、肉はじっくりコトコト煮込むと柔らかくなるイメージがあると思いますが、実は全ての肉に当てはまるわけではありません。今回はその理油を解説します。




上図のように、肉は筋線維と呼ばれる細胞がコラーゲンの膜で束ねられた構造をしています。この筋線維は、長い繊維状の筋原線維タンパク質と水溶性で球状の筋形質タンパク質で構成され、筋原線維タンパク質の間に筋形質タンパク質が詰まった構造をしています。

筋原線維タンパク質が熱で凝固する温度は45~50℃付近。
筋形質タンパク質が熱で凝固する温度は56~62℃付近。
コラーゲンは65℃付近までいったん縮んで最初の長さの約1/3になり、さらに過熱を続けると分解されてゼラチン化します。

つまり、筋肉を構成する三種類のタンパク質は、熱で変性する温度がそれぞれ違います。





①加熱を開始して肉の温度が高くなってくると、最初に筋原線維タンパク質が熱で固まります。この時、筋原線維タンパク質の間を満たしている水溶性の筋形質タンパク質は固まっていないため柔らかく感じる。

②筋原線維タンパク質どうしが熱凝固して固くなる。さらに、コラーゲンが急激に縮むことで一段と固くなる。
③75℃を超えると、コラーゲンが分解、ゼラチン化が急速に進んでいき肉はやわらかくなる。
つまり、いくら煮込んでもコラーゲンの少ない肉は柔らかくならないという事です。

ここからは主観の話になります。
「なぜ、強火ではなく弱火でじっくり煮込むのか?」
この理由を色々調べてみましたが、きっちりした科学的理由が見つかりませんでした。一般的に言われている理由は

①鍋が焦げるから②スープが濁るから(アクがスープに混ざる)③高温の液体に肉を入れると急激に縮み、肉が固くなる(柔らかくならない)からです

参考文献 おいしさをつくる「熱」の科学 NEW調理と理論

公式ホームページ 料理科学の森

肉を焼く前に塩をする理由 料理科学の森




普段肉を焼く時、焼く前に塩をする理由はご存知ですか?

私は昔、「味をつけるだけなら焼いた後でもいいんじゃないのか?」っと思っていました。

肉や魚に塩をふると、表面近くの水分がこれにとけ、濃い食塩水の状態になります。これをうすめようとして、それより内部の水も表面に引き出されるので、身が引き締まって形がくずれず、焼きやすくなります

また、グロブリン系統のタンパク質は食塩水によくとける性質を持っているため、食塩が浸透します。アルブミングロブリン系のタンパク質は熱によって凝固するが、食塩があると速く進むので塩をした肉や魚は、焼いたときは早く表面が固まります

塩を早くからふると、水分にとけてうま味も失われてしまうので、肉は焼く直前、魚も30~1時間前にふるようにします。

参考文献 「こつ」の科学 塩の事典

公式ホームページ 料理科学の森

 

酢の特性 料理科学の森




酢には調理上様々な特性があります。今回はそれを見てみましょう。
酢の特性としては

①酸味と風味を付与

②食材の色に影響する
●緑色のクロロフィル色素(ほうれん草等)は酸性のため退色する。
アントシアニン色素(ナス)は、酸性で赤系統の色に発色したり、安定して退色しにくくなる。
●野菜等の酵素的な褐変を防ぐ。(れんこんやゴボウ)

③硬さに影響する
●酢は酸性のため、ペクチンの分解を抑えてやわらかくなりにくい(れんこんを茹でる時酢を入れる)
●酢を加えることで、肉が軟化する(マリネ処理)
●こんぶを煮るとき酢を入れると柔らかくなる。こんぶ、ひじき、わかめなどの褐藻類(かっそうるい)の細胞壁には、アルギニ酸が含まれている。遊離あるいは、カルシウムの結合したアルギン酸は不溶性食物繊維であり、藻体を保持する役目を果たす多糖類である。有機酸による軟化は、アルギン酸の調味液への溶出度が多く、アルギン酸の重合度・吸水能の低下が著しく、カルシウムの離脱量が多いことから生じる(NEW 調理と理論 p534より引用)

④魚臭(トリメチルアミンなどの塩基性成分の揮発)を弱める

⑤肉のタンパク質を変性させ、肉がしまる。魚肉たんぱく質ミオシンの性質により、食塩を加えて塩締めした肉では生肉の等電点よりも酸性側では水和性を失って膨潤度が低い、アルカリ性では膨潤性が増す。(魚の酢しめ)

たんぱく質の加熱変性を助ける(卵が固まりやすい)

⑦ビタミンCの酸化を抑える

⑧殺菌、制菌作用がある

⑨塩味との相互作用(強い塩分を和らげ、弱い塩分を補う)


調理上、酢には上記の特性がある。

ここからは主観だが、上記には「肉が軟化する」と「肉がしまる」と矛盾することが書かれている。どっちだよ!っと言いたくなるが、同時にこれが起こるためどっちも正解という事になる。こういった矛が調理中に起こるから料理は難しい。

参考文献 NEW調理と理論 マギーキッチンサイエンス 総合調理科学事典 

公式ホームページ 料理科学の森

 

お菓子に作りに上白糖?グラニュー糖? 料理科学の森



お菓子を作る時、レシピには大体グラニュー糖と書かれていますが「上白糖じゃダメなの?」っと思った人も多いと思います。

お菓子を作る時に砂糖を入れる場合、甘味を加える以外にも様々な働きをします。そのため、何の砂糖を入れるかによって仕上がりの味、質感、焼き色などが変わってきます。
砂糖が持つ味や性質は、ショ糖転化糖灰分(かいぶん)の成分がどのような割合で含まれているかで変わってきます。

ショ糖とは、砂糖の甘さを作り出す主成分。淡白なあっさりした甘味

転化糖とは、ブドウ糖と果糖の混合物。ショ糖より甘く感じられ、あとを引く濃厚な甘みを持つ。加えて転化糖は還元糖の一種なので、アミノーカルボニル(メイラード)反応が起こりやすい。つまり、お菓子などの焼き色がつきやすいという特性があります。さらに、吸湿性(水分を吸着しやすい)と保水性(吸着した水を保持する)が特に強い

灰分とは、ミネラル。ミネラル自体に味はありませんが、砂糖の甘味が加わることで、コクのある味わいになります。


上記の事で分かる事
上白糖でお菓子を作った場合転化糖が多いため①色が付きやすい、②生地がしっとりする、③後を引く甘味があるなどです
料理にグラニュー糖を使えば、転化糖が少ないため①あっさりした甘さ②色がつきにく
黒砂糖を使えば、灰分が多いためコクのある味わいになる等があります

参考文献 科学でわかるお菓子の「なぜ?」

公式ホームページ 料理科学の森

 

酒と料理酒の違い 料理科学の森

スーパーに行くと料理酒を見かけることがありませんか?私は昔、料理酒は料理に特化したお酒と思っていました。

料理酒(料理に使用するお酒)にはいろいろなタイプがあるが、一般的なものは、①清酒に2%程度のを加えた「加塩料理酒」、②アルコールに糖類、アミノ酸有機酸、清酒の成分などを加え、清酒の風味を出るように調整したアルコール飲料合成清酒」の2種類です。

①の加塩料理酒は、塩分を含むため酒税がかからずその分安価です。
②の合成清酒は、酒税がかかるが、清酒よりも税率が低いので低価格になるという特徴があります。

ここからは主観になりますが、実際に料理を作る時「清酒」「加塩料理酒」「合成酒」のどれを使えばいいか?という問題です。
一般的には「清酒」を使うのがいいとされています。理由としては、①の「加塩料理酒」は料理の塩分調整が難しい。②の合成酒は「清酒」より風味が弱いなどがあげられます。

参考文献 調味料検定

公式ホームページ 料理科学の森