アボカドの変色を防ぐには? 料理科学の森




「アボカド」や「ごぼう」を切っておいとくと、断面が変色すると思います。これは、組織中のポリフェノール類が酵素と酸素により酸化され、褐色の色素(メラニン)を形成するためである。

褐変が良くおこるもの・・「ごぼう」「れんこん」「なす」「りんご」「バナナ」「なし」「アボカド」

褐変が起こりにくいもの・・「だいこん」「にんじん」「ネギ類」「きゅうり」「トマト」

では、褐変を防ぐにはどうしたらいいのか?

①水につける・・酸素との接触を遮断する

②酢を加える・・pHを4以下にすると、酵素活性が抑えられる

③食塩を加える・・ポリフェノールオキシターゼの活性中心の銅イオンが除かれ、酵素活性が抑制される

④加熱する・・ポリフェノールオキシターゼが60~70℃で失活する。しかし、40~50℃では反応が促進されるため、加熱中に褐変が進行する場合がある

⑤還元剤を使用する・・ビタミンCアスコルビン酸)をかけたりすると変色を防止することができる。

等があげられる


ここからは主観だが、①ではドレッシングやマヨネーズ(油)をかけることにより酸素との接触を防ぐことができる。②⑤では、レモン汁がこれに当たる。サラダを作る時に「アボカド」や「リンゴ」の褐変を防ぐには、素早く調理することが重要です。

参考文献 NEW調理と理論 総合調理科学事典

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酢の特性 料理科学の森




酢には調理上様々な特性があります。今回はそれを見てみましょう。
酢の特性としては

①酸味と風味を付与

②食材の色に影響する
●緑色のクロロフィル色素(ほうれん草等)は酸性のため退色する。
アントシアニン色素(ナス)は、酸性で赤系統の色に発色したり、安定して退色しにくくなる。
●野菜等の酵素的な褐変を防ぐ。(れんこんやゴボウ)

③硬さに影響する
●酢は酸性のため、ペクチンの分解を抑えてやわらかくなりにくい(れんこんを茹でる時酢を入れる)
●酢を加えることで、肉が軟化する(マリネ処理)
●こんぶを煮るとき酢を入れると柔らかくなる。こんぶ、ひじき、わかめなどの褐藻類(かっそうるい)の細胞壁には、アルギニ酸が含まれている。遊離あるいは、カルシウムの結合したアルギン酸は不溶性食物繊維であり、藻体を保持する役目を果たす多糖類である。有機酸による軟化は、アルギン酸の調味液への溶出度が多く、アルギン酸の重合度・吸水能の低下が著しく、カルシウムの離脱量が多いことから生じる(NEW 調理と理論 p534より引用)

④魚臭(トリメチルアミンなどの塩基性成分の揮発)を弱める

⑤肉のタンパク質を変性させ、肉がしまる。魚肉たんぱく質ミオシンの性質により、食塩を加えて塩締めした肉では生肉の等電点よりも酸性側では水和性を失って膨潤度が低い、アルカリ性では膨潤性が増す。(魚の酢しめ)

たんぱく質の加熱変性を助ける(卵が固まりやすい)

⑦ビタミンCの酸化を抑える

⑧殺菌、制菌作用がある

⑨塩味との相互作用(強い塩分を和らげ、弱い塩分を補う)


調理上、酢には上記の特性がある。

ここからは主観だが、上記には「肉が軟化する」と「肉がしまる」と矛盾することが書かれている。どっちだよ!っと言いたくなるが、同時にこれが起こるためどっちも正解という事になる。こういった矛が調理中に起こるから料理は難しい。

参考文献 NEW調理と理論 マギーキッチンサイエンス 総合調理科学事典 

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唐辛子(鷹の爪)について 料理科学の森




現在、世界には数千種類の唐辛子が存在するといわれています。
日本のスーパーでは、「鷹の爪」「八房」「本鷹」「ハバネロ」等が販売されています。
唐辛子の辛み成分はカプサイシンです。カプサイシンの特徴としては、

加熱でも辛みが変化しない(加熱に強い)
芳香性が少ない(臭みけし効果がない)
代謝促進・脂肪燃焼効果
④食欲増進効果
⑤塩分を減らす効果
⑥殺菌作用
43℃ 以上の場合、特に辛く感じる

 

カプサイシン(唐辛子)は、加熱を行っても辛みが抜けない性質があるため、加熱を行う料理に使われることが多い。(アヒージョ)

芳香性が少ないため、香りを楽しむ料理に使われる。(うどんに唐辛子(一味)をかける)

③発汗が促進され、身体の新陳代謝がよくなる。(体重60kgに対して1日あたり24g摂取した場合、2週間で体重が1.5%減少した検証データーなどもある。)

④胃を刺激し、食欲を増進させ、食後の爽快感を感じさせる。

⑤塩分を控えた料理は物足りなさを感じることがありますが、カプサイシンの辛み成分によってそれを補う事ができる。(タケノコを茹でるときに唐辛子を入れる理由は、渋みを和らげるため)

カプサイシンには抗菌活性成分と抗酸化性が含まれている。(漬物や菓子類に入れる理由)

⑦舌のカプサイシン受容体の本来の役割は、43℃以上の熱に反応してカルシウムイオンを細胞内に入れることで、感覚神経に電気的シグナルを発生させる。(つまり、氷水を飲み舌の温度を43℃以下にすると辛みが抑えられる、逆に熱いと辛く感じる


また、海外の記事では、カプサイシンの辛みを抑えるのに牛乳を飲めばいいと書いてあります。これは、牛乳に含まれるたんぱく質カプサイシン受容体のカプサイシンを置き換える作用があるからだそうです。また、乳製品やパンなどの炭水化物にも同等の効果が期待されるようです。

ニューメキシコ州立大学ニュースセンターより

参考文献 調味料検定 マギーキッチンサイエンス スパイスなんでも小辞典 プロのためのわかりやすい日本料理 ハーブ&スパイス図鑑 スパイスの科学


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醤油の特性 料理科学の森




昔読んだ本に、皮肉っぽくこう書かれていました。
「日本人は醤油中毒」
流石に中毒は言い過ぎですが、それほど日本人にとって身近な調味料である醤油について考えてみましょう。

醤油の特性には、
①緩衝作用(かんしょうさよう)があるので、酸味や塩味をやわらげる。
②酸性であるので、醤油を加えて加熱すると緑黄色野菜のクロロフィルが退色する。
魚肉や食肉の臭みを消す
④焼き加熱など温度の高い加熱では、醤油のアミノ酸と糖によるアミノ・カルボニル反応で表面の褐色の焼き色と良い香りが生成される
等があげられます。

また、醤油の使い方として意識することは、香りを大切にする料理、とくに汁ものなどでは醤油の一部は最後に加えた方が効果的である。一方で、味をしっかり浸み込ませる料理(煮物など)の場合は、初めから醤油を加えて煮込む


ここからは主観だが、私が辻調理師学校に通っている時に中国料理のテクニックの一つに、チャーハンの完成間際に鍋のふちに一滴だけ醤油を垂らすというテクニックを習った。これにより、一気に醤油の香ばしい香りがたち食欲が増進するというものだった。意外にも、こういった実践的なテクニックは料理本には載っていないことが多い。

参考文献 よくわかる中国料理基礎の基礎 NEW調理と理論

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濃口醤油と薄口醤油の違い 料理科学の森

日本では、非常に多くの醤油が存在しますがJAS規格では「濃口」「薄口」「たまり」「再仕込み」「白」の5種類に分類されています。


窒素分が高いほどうま味(グルタミン酸やその他のアミノ酸)が多い。

エキス分とは、食塩を除くエキスの指標。

濃口・・日本で製造されている8割以上が濃口醤油です。最も一般的な醤油で、塩分濃度は16~17%、香りは醤油の中で最も強い。

薄口・・関西地方でよく使われており、塩分の度は18~19%と濃口より高い。色も香りも控えめなので、おもに素材の色合いや香りを生かしたい煮物などの調理に使われる

たまり・・独特の香りがあり、色は濃く、とろみを持ち、うま味が強いのが特徴。おもに照り焼きや佃煮に使用したり、寿司や刺身などを食べる際にも使用される。

再仕込み・・色、味、香りがともに濃厚で寿司、刺身、冷奴などに使用される。

白・・色は淡く、琥珀色(こはくいろ)の醤油。味も淡めですが、塩味と甘みは強く、特有の香りを持っている。この特性を生かして、お吸い物、茶碗蒸しなどの調理、漬物の加工などに使われる。


上記の事から分かる事は、
しっかりした香りが欲しい時は、濃口。
色を薄く仕上げたい時は、薄口。
照り焼きや角煮などは、濃度や粘度が高いたまり。
塩分を抑えたい時は、再仕込み。
非常に色を薄く仕上げたい時や隠し味には、白。
となる。
※ただし、そもそも味も香りも違うため、結局は好みになる。

 

ここからはネタ話。
よく、関西料理は色が薄く薄味と言われるが、実際の料理の塩分濃度は関東とあまり変わらないとされている。これは、関西地方では薄口醤油がよく使用されるからと言われています。

なぜ、薄口醤油が使用されるかというと、昔から京の都は海から遠く新鮮な魚介類には恵まれなかった。一方で近郊から京野菜、木の芽や山菜など季節感に溢れる野菜類が手に入る環境だったので、野菜の色や素材の味を楽しむため薄口醤油を使用した・・・・・と一説にはあるそうです。

参考文献 おいしい料理には科学がある大事典 おいしさの科学味を良くする科学 料理のなんでも小辞典 調味料検定 

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コンフィについて 料理科学の森




コンフィ(脂漬け)という言葉は広義に用いられ、コクとジューシーさをだすため、浸漬、含浸(がいしん)、調味、ゆっくりと穏やかに加熱調理したものすべてをさす。

有名な料理に鴨のコンフィが存在する。調理方法は、塩漬けした肉を低温(約80℃)の油脂でじっくり煮て火を通す調理方法
これは、「水で茹でるのと何か違うのか?」という点だが、①うま味が水に溶けない、②鴨の脂肪が効率よく抜けて油っぽくならない等と言われていました。
しかし、現在は鴨のコンフィを作る際の秘訣は時間(長時間)と温度(低温で火を通す)であり、油(脂)は関係ないという意見もあります。


※レシピになりますので、参考程度と思ってください。

①塩をした鴨の脚(鶏肉)に塩をまんべんなくすり込む。(例:鶏肉一枚に対して4.4%の塩、0.4%の砂糖)

②鴨の油(又はバターやオリーブ油)に、①で残った塩と砂糖、ローズマリー、タイム、ニンニク、黒粒コショウ、生のローリエ、ジェニーパーペリー(砕く)を真空パックする。

③24時間、60℃で真空調理する。

④袋から鶏肉を取り出し、香辛料を取り除く。脂は他のレシピに利用する。

⑤鍋に油を6mmの深さまで入れ、220℃に熱する。

⑥皮がパリっときつね色になるまで片面につき2~4分焼く。

 

ここからは主観の話になるが、一般家庭で上記のレシピをほぼすることはないと思う。実際、一般家庭では真空調理機や24時間熱を加え続ける機械を持っていないだろう。

今回記事で言いたかったことは、大量の油を使ってコンフィをする必要はほとんどなく、真空パックと少量の油を使って作る方法や水で長時間煮た後に焼き色を付ける方法等もあるという事だ。

参考資料 モダニスト・キュイジーヌ 基礎からわかるフランス料理 おいしさをつくる「熱」の科学 マギーサイエンスキッチン Cooking for Geeks

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無塩バターと有塩バターの違い 料理科学の森




スーパーなどの乳製品売り場に行くと「有塩バター」と「無塩バター」を見かけることがあると思います。また、ちょっと大きめのスーパーでは「発酵バター」なども取り扱っているお店もあります。では、これらの違いを見てみましょう。

「無塩バター」(食塩不使用)・・・塩が含まれていないので、全体の塩味を自分で調整できる。一方で、保存性は低くい。
無塩バターは、お菓子など大量にバターを用いる時に塩分量を気にしなくてもよい点で優れている。


「有塩バター」・・・重量に対して1~2%の食塩が添加されており、保存性が高い
有塩バターは、直接パンに塗ったり、料理の風味づけに用いたりする。お菓子などに大量に加えると塩味が強くなる。

発酵バター」・・・乳酸菌の発酵過程で様々な呈味成分や芳香成分が生成されるため、バター独特な芳香やコクが加わっている。独特な風味があるため、お菓子や料理にコクを出したいときに使われる。

参考文献 お菓子「こつ」の科学

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